一時流行ったテレビの娯楽番組に、番組収録の際のNG(ノーグット・失敗場面)を集めたものがありました。『○○ネットワークNG大賞』『○○テレビNG集』などの番組名だったと記憶しています。

ドラマ収録中の俳優がセリフを忘れた場面や、ニュース番組でのアナウンサーの原稿の誤った読みなど、緊張感の中での出来事と当事者と周辺の反応の様子が、視聴者の興味を集めていたようです。

その中で忘れられないのが、選挙に出馬した立候補者の第一声の場面です。支援者を前に選挙カーを背景にした、あのよくある場面です。テレビカメラが回り、候補者が数本のマイクを手に持ち、演説を開始し、考え方や意見を調子よく力強く声を張り上げた瞬間です、演説をしている立候補者の口から入れ歯が飛び出したのです。

ボーン、ピュー、コト．．．．．．。
一瞬の静寂(せいじゃく)の後、立候補者は入れ歯を拾い上げ、口の中に戻し、演説を続けました。周囲の支援者も報道陣も反応できずにいる様子が、画面に映し出されていました。

あの場面を笑うことが出来た歯科技工士も歯科医師も居なかっただろうと思います。スタジオのタレントさんたちは、気軽に驚いている様子でしたが、歯科関係者や入れ歯をお使いの方は心を痛めていただろうと思います。

歯科医師と歯科技工士は、個々の患者さんのお口の状態に合った入れ歯の方法を考え相談しながら、患者さんの納得できる入れ歯作りに励んでいます。よりよい入れ歯作りのための研鑽を怠りません。

あの飛び出す入れ歯が、自分が作った入れ歯だったら、あの立候補者が自分の患者さんだったら、何度か夢に出てきたことがありました。

体は年齢とともに変化します。体調の変化とともに、お口の状態も変化します。一度ピッタリ合った入れ歯も、お手入れと歯科医師による定期点検が必要です。

快適な生活、快活な日常のために、定期的な歯科医院での検診をお勧めします。