歯周病は動脈硬化を進め、心筋梗塞やボケさえ招く。

日本では、成人の8割以上が歯周病を患っており、60歳以上の患者が急増しています。
歯周病が進行していくと、歯が抜けることがあります。
現在、歯を失った原因で最も多いのが歯周病です。

「8020(はちまるにいまる)運動」(厚生労働省が進める国民健康づくり運動のひとつ)では 80歳まで20本の歯を残そうがスローガンに立てられていますが、80歳以上の人では歯がほとんど残っていないのが現状です。 歯を失えば、食事が制限され、栄養のバランスが悪くなるだけではなく正しい発音もしにくくなります。
そして、最近の研究で、歯周病は動脈硬化や心筋梗塞、認知症(ボケ)といった全身病を招く危険性があることが分かってきました。
歯周病がどのようにして全身病を引き起こすのかの説明の前に、歯周病がどのような病気なのかを見ていきましょう。

歯周病になると前肢の血管が炎症を起こす。

人間の口の中にはたくさんの細菌が住みついています。
特に、食べカスの固まりの歯垢(プラーク)には、1ミリグラム当たり約10億個もの細菌が存在しているのです。
その歯垢が歯周ポケットという溝に入り込み、歯周病原菌が炎症を引き起こします。
歯周病菌が増殖すると、毒素や酵素が「生き物の体の中で起こる化学反応を助ける物質」をだして歯肉を赤く腫れあがらせます。これが歯肉炎です。
歯肉炎が進行すると腫れている部分が膿み、口臭がひどくなります。最後には歯槽骨(歯の土台となる骨)まで病原菌が及ぶと歯槽骨が溶けて歯が抜け落ちてしまいます。
しかし、人間の体には細菌などの異物が体内に侵入すると、白血球が活躍し撃退する機能が備わっています。歯周病菌なども体内に進入するとこの免疫が働いてサイレントカイン(情報伝達物質) と呼ばれる物質を放ち菌を撃退します。そのときこのサイレントカインが正常な細胞までも攻撃してしますため炎症が起こるのです。

このような炎症が体全体に起こることがあります。病原菌や、サイレントカインが血管を経由して体全体にまわるからです。
最近ではサイレントカインによる炎症が動脈硬化を引き起こす原困のひとつといわれています。
アメリカのノースカロライナ大学では、歯周病の患者は健康な人に比べて心筋梗塞を発病する可能性が約2倍も高いという報告もあります。


歯医者の先生

さらに最近では、動脈硬化だけでなく歯周病が認知症を招くとも言われています。
コロンビア大学医学部の発表では、歯周病が思い人ほど、人や名称などを思い出せる力、語想能力や計算の能力が低下しているというのです。

このように歯周病は、色々な全身病の原因の一つであることが分かってきています。
すでに、歯周病の方は早く治療をするとともに、歯磨きをしっかりとおこない、お口の中を常に清潔に保つように心がけたいものです。